重病者。
その単語で、頭を殴られたような気がした。
「櫻木さんはまだ、眠ってます」
杉崎さんはそう言いながら、歩き出した。
俺は覚束無い足取りで、彼女の背中を追う。
そしてあるベッドの近くで、足を止めた。
ベッドの上には、点滴をされ、呼吸器を付けられた叶花が眠っていた。
「今はまだ眠ってるだけなので、そこまで不安になられなくて大丈夫ですよ」
杉崎さんなりの気遣いだと、すぐにわかった。
言い方が悪くなるが、杉崎さんはそういうことが苦手な人だと思っていた。
子供たちにロボットって呼ばれるくらいの人だから。
「……なんですか」
すると、杉崎さんは恥ずかしそうにした。
俺は無意識に、彼女を見つめていたらしい。
「いえ、なんでもないです」
「……そうですか。では」
納得いかなかったんだろうが、杉崎さんは軽く頭を下げて離れていった。
俺は立ったまま、叶花の寝顔を眺める。