「この面白場面を残さなきゃと思って」
……もういい。
俺はさっさと降りて、すべり台に向かう。
「おにーちゃん、待ってよー!」
後ろから少女の明るく元気な声が追ってくる。
階段に着き、少女の到着を待つ。
少女はもう少しで着くってのに、スピードを落とさない。
そのまま、俺に突撃してきた。
「おにーちゃん、はやい!」
そう訴える少女を離し、視線を合わせる。
「俺はお前の兄ちゃんじゃない」
「でも秋穂、おにーちゃんの名前知らない」
……そう言われると、言ってなかった気がする。
「浅賀蓮」
「カレン?」
どうしてそこを取ったのか。
「おねーちゃん、おにーちゃんの名前、カレンだって! 可愛いねー!」
少女はゆっくりと歩いてきたこっこにそう言った。
こっこは笑いを堪えているが、いっそのこと大笑いしてくれるほうがよかった。