俺は立ち上がり、横に置いていたカメラをこっこに渡した。
こっこはカメラを受け取ると、不思議そうに見つめた。
「カメラの趣味、あったんですね」
「いや、それは……」
「おにーちゃん、はやく!」
こっこに説明しようと思ったら、少女が俺の腕を振った。
力加減を知らないからか、意外と痛い。
「使いたかったら使っていいから」
俺が言い終わるのといい勝負に、少女に手を引かれた。
連れてこられたのは、坂に沿ってある赤い網の前。
少女が目指すすべり台ってのは、コスモス畑より少し上にあるから、階段がある。
だから、てっきりそっちに連れていかれると思ったが。
「これ登る!」
少女はそう言って、網に足をかけた。
さすが子供というか、好奇心旺盛だ。
俺が思うに、登れないだろう。
「なに突っ立ってるんです、先輩。落ちたら大変なんで、一緒について行ってください」



