すると、こっこは俺に軽蔑するような目を向けてきた。



……俺、今なにかしたか?



「なんでニヤついてるんですか。もしかして、秋穂を誘拐する気ですか」



こっこがそう言って少女を抱きしめると、こっこの冗談に乗ったのかはわからないが、少女はきゃー、と言った。



「するかよ」


「本当に?」



……疑うなよ。



「じゃあ、なんでニヤついたんですか」



これは素直に言ったほうが信じてもらえるか。



いや、言わないとしても適当な誤魔化しが思いつかない。



「昔の叶花のことを思い出したんだよ。その子みたいに、俺とは無縁の無垢な笑顔を向けてきたな、と」


「それ、今も変わらなくないですか」



まあそうなんだけど。



「昔のさくら、か……そういえば、先輩とさくら、いつから友達なんですか?」



ここで話していくと決めたのか、こっこは少女を抱えて俺の隣に座った。



「十年前から」



そう答えると、こっこは適当に返事をした。