それでも叶花は満足するんだろう、と思いながらベンチに座る。



十分くらいたったとき、雲行きが怪しくなってきた。



花が咲いてない上に曇りとは。



「先輩?」



厚い雲に覆われていく太陽を眺めていたら、後ろから誰かに呼ばれた。



……俺のことを先輩と呼ぶのは一人しかいないから、誰かはすぐにわかった。



そして振り向くと、予想通りこっこがいた。


その隣に、小さな女の子がいる。



「ここでなにしてるんですか? 先輩に、花とか景色とか眺める趣味あったんですか?」



……辛辣ですね。


もう少し優しい言い方ってのがあるだろ。



「こっこのほうこそ。誘拐?」



冗談のつもりで言ったが、こっこは思いっきり俺を睨んだ。



「妹の世話です」



わかってるって。



「古藤秋穂、五歳!」



こっこに促され、少女が元気に自己紹介をした。


少女は手のひらを俺に向けてくる。



この元気さとツインテールで、なんだか昔の叶花を思い出す。