「お母さんは本当のお母さんじゃないもん。私よりお兄ちゃんの味方になるよ」
叶花は寂しそうに笑った。
……そうだろうか。
理香子さんは、そんなの関係なく味方してくれると思う。
血の繋がらない叶花のために、懸命に働けるような人だし。
話し方によっては、間違いなく叶花の味方になるだろう。
「それにね、蓮くん。もしお母さんが私の味方になってくれても、蓮くんの味方になるとは限らないの」
それはまた耳が痛い。
俺、そんなに嫌われてたのか。
「だからね、蓮くん、自分のことだし、行こうよ」
叶花はこれでもかというほど、顔を近付けてきた。
俺はそんな叶花の額に取り出していた本を当てる。
「蓮くん?」
不思議そうにする叶花をよそに、俺は今一度考えてみる。
果たして、本当に俺が行く必要があるのか。
叶花の言う通り、自分の口で説明すべきことはあるだろう。
だが、俺がそれを言うことで、ややこしくならないか。



