結斗さんにあれだけ言われたんだぞ?
行こうって思えるわけないだろ。
……言われてなくても、行く気はなかっただろうが。
「ねえねえ、行こーよー」
叶花は本を取り出そうとする俺の手を掴み、揺らす。
なんなんだ、この駄々っ子は。
「そもそもお前、外出許可が降りてないだろ」
すると、叶花の動きが止まった。
諦めてくれたか。
と思ったら、叶花は両手でピースを作り、押し付けてきた。
「瞳ちゃんにちゃんと許可もらいましたー!」
……余計なことをしてくれたな、母さん。
ほかに逃げ道……
「蓮くん、そんなにお兄ちゃんに会いたくない?」
叶花は眉尻を下げた。
……しまった。
「……そういうわけじゃない。ただ、面倒なだけ」
「そっか!」
表情が晴れた。
……はめられた感。
「あのね、お母さんが連れてってくれるって!」
「理香子さんが?」