「……蓮くん。彼女を泣かせた理由、納得いくように説明して」
……彼女とは。
ああ、さっき出てったあの人か。
て、待て待て。
俺が泣かせたことになってるのか?
そもそも、あの人泣いてたか?
「知らないとは言わせない」
そう凄まれても、知らないものは知らない。
なにもなかったんだ、知るわけない。
というか、泣かせようとしてたのはあの人のほうだ。
それも、叶花を。
……とは、言わないほうがいいだろう。
真実だとしても、これを結斗さんが信じる確証はないし、下手すれば言い訳をしていると取られる可能性もある。
「なんとか言ったらどうなんだ」
俺がなにも言わないから、結斗さんはどんどん怒りを溜め、胸ぐらを掴む力が強くなっていく。
なんて濡れ衣を着せてくれたんだ。
そんなに俺が嫌いだったか。
……いや、叶花も嫌いだとしても、結斗さんにそんなことを言えないか。
嫌われるもんな。
となると……俺が一番適任ってとこか。
「蓮くん、聞いてるのか」
さて、どうしたものか。
叶花は黙れと言われて、素直に黙ってる。
助けは、求められなさそう。
自力でどうにかするしかない。
が、なにも思い浮かばない。
すると、あまりに俺がなにも言わないから、結斗さんは諦めたのか、手を離してくれた。



