「でも、食べてほしかった!」



お前が買ってきたわけじゃないだろ。



「大丈夫だよ、叶花ちゃん。まだあるから」



結斗さんは最初に持ってきた袋を示した。



うわぁ……



「蓮くん、はい!」



俺の苦手な眩しい笑顔が、苦手なチョコケーキを勧めてきた。



食べたくない。


心の底から、食べたくない。



「まったく……頑固だなあ、蓮くんは。はい、あーん」



叶花は俺のフォークで、チョコケーキを一口分取って向けてきた。



……真面目に、勘弁してくれ。



ガキじゃないんだ。


そんなことをすれば食べる、なんてありえない。



「蓮くん、ほら。口開けて?」



無理矢理にもほどがある。



「ほらー、蓮。早く食べてあげなよー」



そんなことをニヤニヤしながら、須藤さんが言ってきた。


よく見れば、横で母さんが似たような顔をしている。



こっこは俺が渡したケーキを食べながら、頬を膨らませている。