「心配なのはわかるけど、まだ文化祭の途中なの」
「でも……!」
本当に叶花が心配で、大切に思っていることがひしひしと伝わってくる。
「こっこ、戻ろう」
こっこの手首を掴み、保健室を出ようとした。
だけど、こっこはその手を払った。
「どうして先輩は、そんなに平気なんですか! 心配じゃ、ないんですか……」
「いいから、行くぞ」
俺は引きずるように、こっこを保健室から出した。
廊下に出てすぐ、これでもかというほど睨まれる。
「……最低。見損ないました」
「そもそも、俺のことそこまで尊敬してないだろ」
「……」
……否定しないのか。
まあ、今気にすることじゃないから、別にいいか。
「今、文化祭に戻れるほど、私は先輩みたいな淡白な人間になれません」
「だから、少し俺の話を聞けよ」
こっこは不服そうな顔をして、俯いた。
「どれだけ心配でも、俺たちは付き添えない」