「いつもの病室ですか?」
「はい」
すると、おじさんは俺の手を引いて、病室に向かった。
「なあ、俺待ってるよ。母さんもいるし」
「……俺に勇気をわけると思って、ついて来てくれないか?」
無理に笑っていることがまるわかりな笑顔だった。
そう思ったら、おじさんはわかりやすく暗くなった。
「情けないと思ってくれて構わないよ」
「別に、思ってないし、思わない」
自分の大切な人が倒れて、入院ってなると、怖くなるのは当然だ。
何度も入院してるって言ったって、慣れるわけない。
「涼花……カナのお母さんは、カナを産んですぐ死んだんだ。病気でね。だから、いつかカナも……と思うと怖くて仕方ない」
だから、あんなに震えてたのか……
今だって、繋いだ手から恐怖を感じていることが伝わってくる。
だが……俺にどうしろって言うんだ。
言いたかっただけか?
だけど、俺だって言えることくらいある。
「あいつはまだ死んでない」
「……うん、死んでない」
「パパー!」
すると、二つくらい先にある病室から、泣き叫ぶ声が聞こえてきた。



