「はい!」
……聞けよ。
俺が手を伸ばさなくても、叶花は手を引かない。
俺は渋々受け取り、叶花の花火から火をもらう。
「綺麗だねー」
俺が渡された花火は、緑や黄色、赤とどんどん色を変えるものだった。
「楽しいね、蓮くん」
花火の光に照らされた叶花の笑顔は、文字通り眩しかった。
「叶花が楽しいなら、それでいい」
「蓮くんも楽しんでよ」
あいにく、なにかを楽しむ、ということがわからない。
「もうすぐ蓮くんの誕生日だね」
「まだ一ヶ月先だ」
もうすぐってのは、一週間程度先のことを言うと思うが。
「俺より、こっこの誕生日を聞いてみれば?」
「私、こっこの誕生日知らない! こっこ、名前に夏があるから、もうすぐかも!」
そう言って、叶花は俺の終わった花火を持って、こっこのところに行った。
「蓮くん!」
そしてすぐ呼ばれた。
まあ誕生日を聞くのに、そんなに時間はかからないよな。



