知らなかった。
叶花がこんなに悩んでいたなんて。
どうして、俺が気付けなかった。
一番近くにいたのに。
俺は、叶花のなにを見てきたんだ。
辛い思いをすべて隠し、笑顔を見せるやつだって、知っていただろ。
「……蓮くん」
叶花に呼ばれ、手を握られていることに気付く。
「大丈夫?」
叶花は目元を赤くしている。
……どうして俺が叶花に心配をかけているんだ。
普通に、違うだろ。
いや、心配かけたとしても、今じゃないだろ。
「ああ、大丈夫だ」
「嘘はダメ」
「お前が言うな」
「私は嘘なんてついてないよ。言わなかっただけ」
……変わらないだろ。
すると、叶花は俺の手を握る力を少し強めた。
「お母さんは大丈夫なんだよ、蓮くん。絶対、目を覚ます」
そんなことわかってる、とは言えなかった。
これは俺に言ってるんじゃなくて、叶花自身に言っている。



