ちゃんと約束をしてなかったのは、お前じゃないか。



「わかった! 早く行って、こっこを待つ!」


「でも叶花、花火も見たいんだろ?」


「うん!」



叶花は満面の笑みを見せた。



……なにもわかってないな、こいつ。



「あのね、叶花ちゃん。蓮が言いたいのは、そんな長い間浴衣でいる気?ってこと」



母さんが苦笑しながら、叶花に説明した。



「なるほど」



なるほど、じゃない。



「じゃあ……浴衣は諦める」



そこまで残念そうにしないでくれ。



「諦める必要はないよ。途中で一回帰ってくれば」


「その間、俺とこっこは待たされるわけ?」



ため息混じりに言うと、母さんはポカンとした。



「叶花ちゃん……蓮が、人の名前を……」



……そこに驚くのか。


そして俺は。



「あのね、瞳ちゃん。蓮くんはこっこの名前、覚えてないよ」



その通り。


今、こっこのフルネームを言えと言われても、絶対言えない。



「あー……そういうことか。なんだ、驚いて損した」



この理由を知られると、なんだか小恥ずかしい。