俺もこっこくらい、きっぱり断りたい。
だが、ここで逃がしてくれないのが、叶花だ。
それを知っているから、それが面倒だから、俺は断らないのかもしれない。
「こっこと祭り行きたい!」
「浅賀先輩と二人で行ってらっしゃい」
「こっこも行く!」
「人の話を聞きなさい。私は行かない」
「浴衣着る!」
「お一人でどーぞ」
……こっこも負けてなかった。
むしろ、叶花のほうが劣勢。
滅多に見れないこの状況がなんとなく面白くて、俺は本を閉じた。
今までどんなわがままも、それなりに叶ってきた叶花からすれば、この状況は面白くないだろうな。
「こっこ、浴衣似合うよ、絶対……」
「しつこいな。さくらはいくつなの。もしかして、そんなにわがまま言って許される生活でもしてきたの?」
……ええ、その通りです。
その原因の一人が、俺だったりする。
というか、いくつ、ねえ……
あの叶花がどう誤魔化すか。
「……さくらは、雨宮くんと同い年なのです」



