「蓮くん、おかえり! こっこはお疲れ様!」
満面の笑みでいるこいつに、俺もこっこも、怒る気が失せる。
「ほら」
俺はカメラを渡し、椅子に座ろうとした。
「こっこ、どーぞ」
見たところ、前からパフォーマンスを見たい生徒が多く、椅子は空いていない。
いくら愛想が悪いとはいえ、ここで女子を立たせるような心は持っていない。
「先輩でも紳士的なことができるんですね」
君は一言余計ですね。
「こっこ、やる気ないね!」
叶花は俺が撮ってきた写真を見ながら、そう言った。
それを大きな声で言ってやるな。
「仕方ないでしょ、ダンスは嫌いなの」
こっこは照れながら、俺が座っていた椅子に腰を下ろした。
「ちゃんと出てるだけマシだよ。どこかの誰かさんはサボって出てないんだから」
「先輩、そんなことしたんですか」
……ええ、しましたとも。
だが、迷わず俺を向くのはどうかと思う。
「私、カメラ返してくるね!」