まただ。
「ごめんね、蓮。すぐ帰ってくるから」
また、約束破った。
俺の意思なんて無視して、ドア、そして鍵は閉まる。
……大人なんて、嘘つきだ。
もう一つの鍵の場所は、ずっと前から知ってる。
こういう留守番は多くて、一人で勝手に出かけることも多かった。
今日もまた、その鍵を持って家を出る。
母さんは俺がこうやって出かけてることは、たぶん知らない。
知ってたら、鍵は別の場所に隠されると思う。
でも、そうしてないってことは、バレてないってことだと思う。
母さんが帰ってくる前には家に戻ってるし、全て元通りにしてるからだろうけど。
そして、俺が今向かってるのは、結構前から母さんと約束してた、花見ができるところ。
川の両脇に満開の桜。
土手には割と広めのスペースがあって、毎年、たくさんの人が花見を楽しんでいる。
……今年は行けるって言ったくせに。