〝不思議の国のアリス〟の〝アリス〟は最後にどうやって大きくなったのか。肝心な情報が私にはない。絵本に描写がなかったのか、覚えていないのかわからないが、大事な情報が今私にないことは確かなことだった。


『さあ、アリス。君が望んだ結末を』


ふと、白ウサギの言葉が頭を過ぎる。
……ポケットだ。
それと同時に思い出したのはポケットの違和感。

急いで手を突っ込んで〝それ〟を掴んで私はポケットから〝それ〟を引っ張り出した。

手に握られていたのは〝EATME〟と書かれたケーキ。
昨日これを食べて何が起きたのか忘れる訳がないだろう。


パクッ


私は迷わずそれを口に入れた。


「…っ!」


すると私の予想通り体はみるみる大きくなっていった。
そして私はここにいる誰よりも大きくなり、トランプ兵をはじめ、そこにいる者たちは全員、私から見ると本物のトランプのようなサイズになっていた。

ここからの物語を私は知っている。


「アナタたちなんか、ただのトランプじゃない!」


どこかで聞いたことのある台詞を私は吐く。どこかで聞いたことのある台詞ではない。これは実際に〝不思議の国のアリス〟の主人公である〝アリス〟がそう吐いたものだ。

大きくなった私を見てトランプ兵たちは私に鬼気迫る勢いで一斉に飛びかかってきた。
そして私はそれを蹴散らした。