塗りかけの白い薔薇と塗られた赤い薔薇の数。焦って作業をするトランプ兵達の様子。

それは昨日見たものと全く同じものだった。


「コイツらはこの時間はいつも必ずここで薔薇に色を塗っている。必ず、だ」


三月ウサギがわかったか、と言う風に私を見る。


つまり三月ウサギが言いたいことは先程の言葉の通りだということだ。
今まさに見ているこれが〝決められた動きしかできない奴〟なのだろう。


「うん」


今度は疑問に思うことなどなかった。だから返事をした。

目の前で昨日と全く同じことをしている事例を見せられると納得するしかないだろう。

変だとは思うが。


「自由の意味はわかったけど自由であることと白ウサギを信じることにはどういう繋がりがあるの?」

「……お前、ほんっとに何も知らねぇんだな」


話を本題に戻せばまたまためんどくさそうに三月ウサギが私を見つめる。


「もう疲れた。俺はこういう説明は得意じゃねぇんだよ」


そしてくるりと私に背を向けると三月ウサギはまた来た道、つまりお城の方へ歩き出した。


え?教えてくれないの?


「ちょっと待ってよ!」


私を置いて歩き出した三月ウサギを私は急いで追いかけた。