「アリス、君も大概狂っているね」

「え?」


ふと共に並走していたチェシャ猫に声をかけられて我に帰る。

どういうこと?


「こんな状況でそんな楽しそうな顔しちゃってさ。俺と一緒だ」


ニヤニヤとチェシャ猫が私を見つめる。


あぁ、私、顔にも出ていたんだ。


「そうだね。狂っているのかも」


この世界の人達はどこかおかしいけれど、私もその例に漏れずおかしいのかもしれない。

だって私は〝不思議の国の〟アリスだから。


「アリス!逃がさないわよ!私のものにならないなら死になさい!」


パンッ


後ろから大きな音がする。

現実ではテレビでぐらいしか聞いたことのない音。

リアリティがない、あまりにも非現実的な音。


これは発砲音、銃だ。


何となくない知識の中からそんなことを導き出した時にはもう遅かった。


「っ!」


背中から胸が熱い。

動けない。


バタッ


その場で倒れたのと同時に私の口から血が溢れ出た。