「さて、我々はハートの女王から招待を受けているので残念ながらこの最悪なクロッケー大会に参加しなければならないのだが、アリスはどうするんだい?」


帽子屋が一息付きながら私を見つめる。


「もちろん参加するよ。白ウサギを見つけないとだし、何より狂気のクロッケー大会を見て見ぬフリなんてできない!」


私の答えはもちろんイエス。

もしかしたら白ウサギも招待されているかもしれないし、狂気のクロッケー大会は何としても阻止しないと!


間髪入れずすぐに答えた私を見て帽子屋はフッと優しく微笑んだ。


「では、明日は我々と共にハートの城へ向かうとしよう。今日はもう私の屋敷でゆっくり休むといい」


帽子屋が空を見上げたので私も同じように空を見上げる。

いつの間にか空は薄暗くなり始めている。


もうすぐ夜だ。


そう言えばチェシャ猫とこの世界の時間について話した時、こちらとは時間の概念が全く違うこと思い知らされて驚いたことを思い出す。


この世界には夜が来て明日が来るっていうのにどうしてチェシャ猫は時間が過ぎないなんてことを言ったのだろう。


「ねぇ帽子屋。この世界は時間が過ぎないの?」


「そうだね。時間とは過ぎないもの。永遠と繰り返されるものだから」


疑問に思って帽子屋に聞けばやっぱりチェシャ猫と同じように訳の分からない答えが返ってきた。


この世界は1日という同じ時間を永遠と繰り返しているってこと?