「あぁそういえば」


ふと何かを思い出したかのようにヤマネが小さく呟く。


「アリスはあっちには帰らなかったんだね。あんなにも帰りたがっていたのに」


眠たそうにだけどどこか興味深そうにヤマネがこちらを見ている。

あぁ、そういえばそんな話をずっと前にヤマネとした気がする。


「帰りたかったんじゃなかったの?帰りたい場所があったんでしょ?」

「そう、なんだけどね。私が帰りたかった場所がここだったから帰らなかったの」

「ふーん」


自分から聞いたんでしょ!と言いたくなるくらいヤマネのリアクションは薄い。
まあいつものことだからいいのだが。


「…」

「ん?」


なんだか静かだと思い横を見れば立ち止まって立ったまま寝ようとするヤマネの姿が目にはいる。


「…ヤマネー!寝るなー!」


私はヤマネが寝ないように再び大きな声を森へ響かせた。