「アリスー!起きてー!朝だよー!」


目覚ましの代わりに白ウサギの声が私に朝を告げる。この世界に留まることを決めて何日、何週間、何ヶ月経ったのかわからない。
でも私は随分長いことここで生きた気がする。


「まだぁ…あと5分…」

「そう言って30分も寝続けてるでしょ!今日は帽子屋のところに行くんでしょ?」


まだまだ眠たい私は布団に潜って再び寝ようとしたがそれはバサァッ!と勢いよく白ウサギに布団を剥がされたことによって阻止されてしまった。


「うぅー!布団…っ」

「はい、起きるー。おはよー」


必死に布団を取り返そうとする私をひらりとかわして白ウサギは私が起き上がらないと取れないような場所に布団を置く。
これはもう起きるしかない。

ここは白ウサギと共に暮らしている小さな一軒家。もちろん帽子屋屋敷や女王様のお城みたいに豪華絢爛、超巨大な建物ではない。
ごくごく普通の2人で住むには丁度よいサイズの家だ。

ちなみに私がこの世界に残ることを決めた時に寝ていた部屋はこの家の部屋だった。今ではそこは私の部屋だ。

いつもの水色のワンピースに袖を通して身支度をする。それから白ウサギが用意してくれていた朝食を白ウサギと共に食べ始めた。


「そういえば白ウサギは帽子屋の所には行かないの?」

「うん。僕もアリスと行きたい気持ちは山々なんだけどお城での仕事があってね」


温かいスープを口にしながら白ウサギを見つめれば白ウサギが残念そうな顔をしてこちらを見ていた。

あれからこの世界はいろいろ変わり、白ウサギはこの世界での何と宰相のようなポジションをすることになったみたいで。
時折こうやってお城に行かなければならない日がある。