「ねぇ、白ウサギ」


私の涙も落ち着いてきた所で白ウサギの名前を再び呼ぶ。


「何?」

「ここはアナタが魔法で私の為に作り出した世界なんだよね?」

「そうだよ」

「世界が1日を繰り返すのも、同じことしかできない登場人物たちも全て?」

「そう」 


私の質問に白ウサギがにこやかに淡々と答えていく。


「アリスの望みは〝不思議の国のアリスのように冒険したい〟でしょ?だから毎日この世界はアリスの為に〝不思議の国のアリス〟の物語として動いているんだよ」

「その登場人物たちには私や白ウサギみたいに意思はあるの?」

「もちろん。彼らは知らず知らずのうちに同じことを繰り返しているだけ。ごく一部、アリスと関わることになるやつは流石に知性がいくらかいると思ってそう言った制限を緩めているけど」


つまり、帽子屋たちや女王様の行動が自由だったのは私と共に冒険させたり、時には対立させたりする為、てことか。
だから関係ないものは逆に物語を滞りなく進ませる為に自由を排除した。


「この世界の人たちはちゃんと生きているのね」

「そうだね」


大体理解した私にただ頷くだけの白ウサギ。


「さて、ここで選択の時なんだけど」


話を整理し終えて一息ついていると白ウサギが優しい声でそう私に声をかけてきた。

選択?


「アリスはそれでもあっちに帰りたいと思えるの?」