「行きたい。でももう死ぬから無理だよ」


とても魅力的な話だったが今の状態では無理な話だった。
白ウサギは今のこの状態は「延命」だと言っていた。言葉の通り私は今延命されているだけであり、もう死ぬはずだ。
そうなることを私が望んで自ら毒を飲んだ。


「大丈夫。あっちはこっちで意識不明の重体でも十分生きていける世界だから。死んでても同じだよ」

「え」


にっこりと笑う白ウサギの言葉に思わず声が出る。
意味が全くわからない。


「体はいらない。魂さえあれば世界を行き来することなんて簡単だよ。あっちの世界はこっちの世界で言う夢みたいなものだから」

「…なるほど?」


白ウサギが説明してくれたが、何となくしかわからなかった。わからなかったがその白ウサギの全く現実味のない説明を私は受け入れることにした。そう言うものだと思おう。


「何でも思い通りになる夢を見れると思って?で、アリスはどんな夢を見たい?」


可愛らしく首を傾げて白ウサギが私を見つめる。

何でも思い通りになる夢、か。
もし、夢ならば何がしたいか。


「……私であったことを忘れたい。普通の女子高生として生きていて、〝不思議の国のアリス〟の世界で冒険をしたい」


頭に浮かんだことを私はそのまま深く考えず言葉にする。