私の名前は榊原アリス。
日本有数の由緒ある一族、榊原家の娘。

家族は姉が2人と兄が2人。それから両親がいて大きなお屋敷には祖父母や使用人、たくさんの人がいた。


あぁ、だけどそうだった。
ここにはたくさんの人がいたけれど私の味方なんて誰一人いなかった。ここには私の居場所などなかった。
いや、ここだけではない。世界中どこを探したってそんな場所はなかった。

何故なら私の髪は生まれつき色を持たず、日本人でありながら真っ白な白髪だったから。
血筋や伝統を重んじる榊原家において私はただただ異質なものでしかなかった。


「お前なんて産まなければよかった。お前は榊原の恥よ」


物心ついた頃からそう実の母親に言われて生きてきた。
榊原の恥と言われ、なるべく表舞台に私が立たないように幼少期からずっと家に閉じ込められていた。

幼い私の世界は家が全て。
その全てである家の中で私はいつも1人だった。


「嫌っ!痛いっ!」


グイッと白く長い私の髪を掴まれて私は悲鳴にも聞き取れる声を上げる。


「うるせぇな」

「気持ち悪いんだよ」

「化け物」


毎日兄弟たちが私を虐めた。


「はっ離して!」


頭皮と髪の境目が引き裂かれそうだ。

だけどどんなに痛くても実際にはなかなか引き剥がされることはなく、髪と一緒に体が上へと持ち上げられていく。


「気持ちが悪い」「何でそんな色なの?」「普通じゃない」「化け物」「近寄るな」「こっち見んな」「お前なんて生まれて来なければよかったのに」


そして兄弟たちを始め、両親や祖父母、私の家族と呼べる存在は毎日私に悪意をぶつけて来た。

終わらない言葉の暴力。
心も体も痛くて痛くて。
抵抗しようともがいても私にはなんの力もない。
幼い私はただただその暴力を無力にも全て受けることしかできなかった。