これで、この〝不思議の国のアリス〟の〝アリス〟の冒険はおしまい。ここで〝アリス〟はお姉さんの膝の上で目を覚まし、夢の中での冒険をお姉さんに楽しそうに話すのだ。

だけど私は目を覚さなかった。ただただ後から後から湧いて出るトランプ兵を蹴散らし続けた。
私にはその姉はいない。私にはこの物語の私の記憶しかない。私はここで生きた私しかもうわからない。

私は誰?家族は?友人は?
家は?元の生きていた世界は?ここは夢?それとも現実?

ねぇ、私はアリスなの?


たくさんの疑問が溢れた。溢れて溶けてまた溢れて。それの繰り返し。

そしてようやく意識が遠のき始めた。
私はやっと夢から覚めるのだ。


『全ては君が望んだままに』


意識を手放す最後に聞こえたのはどこか悲しげな白ウサギの声だった。