あの時からずっと、君は俺の好きな人。

更衣室は、もちろん男女別々なので、いつもプールでお疲れ様をしたあと、みんなバラバラに帰ってしまう。

女子はプール後の身支度が長いので、男子がいつも先に帰る形になる。

焼き菓子をみんなに渡すなら今がいいだろう。


「ちょっと待ってて!」


みんなにそう言付けると、私は荷物を置いている更衣室に急いで入って、焼き菓子が入っている袋を取ってプールサイドに戻った。


「これなっちゃん……うちでパン屋やってる叔母から。よかったら、食べて」

「わー! 藍の家のパンすごくおいしいんだよー! やったあ!」


美結が瞳を輝かせて喜ぶので、私は微笑んで彼女に焼き菓子の詰め合わせの袋を1つ渡した。


「吉崎さん家のパン屋のパンはカレーパンしか食べたことないけど、確かにうまかったなあ。ありがと、お腹減ってたんだ」


水野くんも嬉しそうに笑う。


「ーーうん、よかった」


水野くんの素直な微笑みは、何故か私の心を揺り動かす。思わず私の顔もほころんでしまった。