「じゃあ、最後にもう一本……」


行こうか、と私が言いかけた、その時だった。


「ーーはぁ。ないわー。マジ空気読めよって感じだよね」

「ほんとそれ。2年がそんなに頑張ることないのに。3年に花持たせろっての」


プールサイドの少し離れた場所から、そんな刺々しい声が聞こえてきた。

思わず声のした方を私は向く。するとそこには、水着を着用した3年生の女子2人が、意地悪そうな笑みを浮かべて立っていた。


「私ら今年で水泳大会も最後なのにね。優勝するつもりとかありえなーい」

「目上の人に大しての振る舞いがなってないよねえ」


2人は私たちの方はあえて見ずに、しかし声を張るようにして明らかな嫌味を漏らす。


「ーーえ、何あれ……なんかやだね」


美結が小声で耳打ちする。

嫌なことがあればはっきりと物申すタイプの美結だが、こんなくだらないことで揉めるのは馬鹿らしいと思っているようだ。