だけどなっちゃんは、今まで何も言わなかった。きっとゆっくり見守っていてくれたのだと思う。私が私のペースで生きるために。

心配だから、とはっきり言ってくれた水野くんも、黙って待っていてくれたなっちゃんも。ーー二人ともなんて優しいんだろう。

私はいい人たちに囲まれてるなあ。

そして、なっちゃんから見て私が少し変われていたということが嬉しかった。

自分が抜け殻から脱せられた気がして。


「ーーなっちゃん、本当にありがとう。とりあえず私水泳大会の係頑張ってみる」

「うん、がんばってね。ーー藍が頑張れてるのは、水野くんのお陰なのかな?」


するとなっちゃんは、少しにやっとして言った。

まあ、水野くんのお陰と言えばもちろんその通りだが、なっちゃんの言葉の裏に私をからかうような要素が入っているのを感じて、私は照れて首を振る。


「な、なっちゃんが期待してるようなことはないから!」

「えー? ほんとー? でもかっこいいよね、水野くん」

「そりゃ、まあそうだけど……」

「ふ〜ん? 本当に何も思ってないのかなあ?」

「ーー! 思ってなーい! もう行ってきます!」