クラス中からクスクスと言う笑い声が起こっていた。先生も本気で怒っているわけではないようだったし、なんだか微笑ましかった。

すると、前の席の美結がこっそり振り向いてきた。美結は笑いを堪えたような顔をしていた。


「あの3人、今朝早く来てプールで朝練してたんだって」

「え? そうなの?」

「うん、さっき言ってた。ってか、言ってくれれば私も朝早く行ったのにさー。一緒に練習したかったな」


美結の言葉に私は驚愕する。

初日の練習での、「せっかくやるんだから練習も大会当日も頑張ろう」という水野くんの言葉に、美結も賛同はしていたけれど。

まさか、いつも遅刻ギリギリに登校する美結が、朝練まで厭わないなんて。


「美結、そんなに水泳大会に大してやる気あったんだ」

「え? あー、まあ最初はね、藍を係にしちゃった責任だけでやってたよ。適当に練習して本番はそれなりに頑張ればいいやって」

「うん」

「だけど、水野くんを見てると私ももっと頑張んなきゃって気になるんだよね。不思議だけど」

「ーーそっか」


水泳大会に対して、そんなに熱のなかった美結にここまでやる気にさせた水野くん。

ーーなんだかすごいな。

彼とはまったく対照的で、事務的な自分。場違いな自分の存在に、私の心臓がキュッと傷んだ。