水野くんは11歳で亡くなっている。本来なら、この出会いすらなかったはずなのだ。

この出会いが無ければ、私はきっと今も、失うことに怯えて無気力に毎日を過ごしているだけだっただろう。

理解したけれど、まだ涙は止まらない。だけど私は決意した。水野くんに思いを告げることを。

このまま伝えないのは、彼に対しての冒涜にあたる。


「みず、のくん……」

「ーーはい」

「だいす、き……です。私は水野蒼太くんが……好き、です。ずっと、ずっと……大好き、です!」


彼を見つめながら最後は叫ぶように言った。すると水野くんは、笑みを濃く刻んだ。

彼は私の頬を優しく撫でるように触れる。

そして私達は、ゆっくりと唇を重ねた。私は瞳を閉じる。

水野くんの唇は熱くて、柔らかくてーー優しくて。

私はますます彼に恋をしてしまう。

ーー次の瞬間、風が強く頬を凪いだ。それと同時に、唇に感じていた愛しい感触が消滅してしまった。