「うんうん! 私が怪我したのがかえってよかったりして!?」

「そ、それは無いから!」


坂下さんの冗談に私は慌てて首を振る。

実際、タイムを見たら坂下さんが入っていた時よりは少し遅かったし。坂下さんは「あはは。そう?」と笑う。


「いや、それでもさー、バタフライであんなに泳げる人初めて見たよ。吉崎さんもしかして水泳やってた?」


水野くんが私をじっと見て、少し意味深に尋ねる。なんとなく、彼が私が泳ぎが得意だったことを知ってるんじゃないかとまた思った。

まあでも、どう考えてもやっぱりそんなわけないか。

しかしそれにしても、このメンバーに今まで塩素アレルギーだって嘘を言っていたことが、申し訳なく思えてきた。

でも今さら真相を打ち明けたりなんかしたら、幻滅されそうな気がして。

ふと、美結はと目が合った。美結は静かに微笑むと、ゆっくりと頷いた。

ーー大丈夫だよ。

私の不安を理解しているようで、美結が目でそう言っているのがわかった。