「いいっていいって。気にしてないよ」

「……よかった! あのね、吉崎さんめっちゃかっこよかった!」


加藤さんは嬉しそうに目を輝かせ、私を讃えてくれた。

どちらかと言うとあまりいい印象はなった加藤さんだったが、私は素直に嬉しかった。

まあ、別に加藤さんだって悪い子じゃない。ちょっと男漁りに余念が無いだけで。


「いやー、あのバタフライは本当に伝説だね」

「みんながクロールで泳ぐ中、豪快でかっこよかった〜」

「他のクラスのみんなもびっくりしてたよね!」


そしてしばらくの間私はクラスメイト達に褒め称えられ、照れ笑いしながらみんなの話を聞いていた。

クラスメイト達の隙間から、少し離れたところにいる水野くんの姿が時折見えた。

水野くんは私を眺めて微笑んでいた。満足げに……いや。

なぜかその微笑みは、不敵に見えて。まるで上手くいった、俺の思った通りだとでも言っているかのようで。

ーー『泳法は自由ってルールがあるよね』