「お疲れ様でした。―蘭花様」


栄貴妃―雪麗様の侍女頭として、ずっと、目を光らせて、笑っていた貴女。


あの日々を嘘だとは思いたくないけれど、今、死に直面してしまっている貴女を救っているのが、あの頃の記憶であるのなら―……翠蓮に出来ることは、ひとつだけ。


天からは、どんなに足掻いてもきっと、逃れられない。


でも、だからこそ、この人生は楽しいと思えるのかもしれない。


「……」


建物が崩れる。


それをぼんやりと眺めながら、その中で、翠蓮と祥星様は彼女と手を繋いだまま、


彼女が孤独でないように、


彼女の強がりが、今際だけでも壊れるように、


願い続けた―……。