「……また、勘かの」
「うん」
「変わらぬな」
「変わらないよ。私はずっと……」
翠蘭はそんな祥星に大きなため息をついて、
「変わらぬのは祥星様の良い所だと思うのじゃが、浮かれておると、黎祥に殴られてしまうぞ。親としては、ちゃんとしておくりゃ」
と、すぐに皇太后の顔になって、火消しを行っている人間の元へと向かってく。
「―……うん、大丈夫だよ」
祥星はそんな背中を眺めて、空を見上げた。
愛晶が仲間入りした、空の向こう。
自分が愛した人達が、いるところ。
「なぁ、鳳雲。お前は昔から、正しいな」
手を伸ばして、届くはずもないけれど。
「正しくて、格好よくて、そして、何より、非道だ」
当時、皇帝―祥星―の許嫁であった翠蘭を、惚れさせた。
宮廷一の美人だと謳われていた白蓮を、惚れさせた。
その他にも、数名……。
「果たして、この事件はお前のせいなのだろうか?お前の正しさが、翠蓮を苦しめているのだろうか?お前は一体、翠蓮をその腕に抱いた時、何を思ったんだ?」
―答えは返ってくるはずがない。
けれど、問わずにはいられない。
―もう、頼りになっていた弟は死んでしまったのに。
「何で、死んでしまったんだ……は、愚問だな。何故なら、私がお前を殺したようなものだ」
祥星は鳳雲がいたから、皇帝となれた。
鳳雲がいたから、孤独ではなくいられた。
鳳雲がいたから、国を立て直すことが出来た。
鳳雲がいたから、黎祥を失わずに済んだ。
鳳雲がいたから、灯蘭は今と生きている。
鳳雲がいたから、この国は滅んでいないのだ。