寂しかった。


こんなふうに、誰かに寄りかかりたかった。


甘えたかった。


父が死んで、兄たちがいなくなって、背筋を伸ばしていなければ、何も守れないと思った。


自分の無力を思い知って、嘆いた。


半分意地でなった薬師として、一体、翠蓮は何も残せたのだろう。


母も弟妹も救えず、ただ、怯えて縮こまっていた中で。


(貴方だけが、希望をくれた)


自分でも驚く程に、涙が溢れる。


虚しさに押しつぶされそうで、


この苦しみは、よく知っていて。


「……愛しています」


やっとの思いで、口にしたかった感情を口にする。


玉響の愛情なんて欲しくない。


失った時の苦しみを増やすくらいなら、
甘えるべきじゃない。


分かっているけど、愛してる。


この身を、心を、翠蓮は黎祥に委ねたいと願っている。


「愛し抜くよ。―君が幸せになることを、この国の龍に願う」


『貴女が幸せになってくれることを、この国の龍に願います』


―あの時は、ただ、貴方の隣が、自分にとっての幸せな場所だと思っていた。


いつだって、幸せを願ってくれる貴方には、色んなことを教えられる。


嗚呼、視線が震えて、胸の高鳴りはおさまらない。


黎祥のそばに居ると、抱きしめられていると、自分が自分でなくなるような心地がして逃げ出したくなるのに、ずっと、ここにいたいと、囚われていたいとも願ってしまう。