(坊や、ごめんね……)


これから先、嫌でもあの子はここで生きていく。


嬉しいことも、悲しいことも、全てをひっくるめて生きていく。


生まれた時から、縛られた運命。


そのことを可哀想だとは思うくせに、あえて、その道を強制的に歩ませるなんて、自分は母親失格だ。


分かっているけど……どうしようもない。


親になるって、不思議だね。


あの子を離したくなくても、離さなければならないのなら、どうせなら、長生きしよう。


彩苑の頃に出来なかった分、貴方が死んでしまったあとも。


あの子の治めるこの国で、変わらず、生きていければ―……。


『自らの想いには、正直であれ』


―それでいいの。


(無理です、彩苑様)


同じ魂を持っていようと、


生まれ変わりだと仰がれようと、


(私には、貴女のようになれません)


翠蓮はもう、変えられぬ流れに乗ってしまったから。


でも。


(……黎祥を愛したこと、後悔はしてない)


祥基に言われて、


彩苑、貴女と話して、


貴女の記憶を持って、


漸く、生まれてきた意味を見つけられた気がするの。


「お休みなさいませ、李修儀様」


生まれてきた意味、それらを全て抱いて、翠蓮は眠りについた。