「お前は気持ちが高ぶった時、一旦、眠るのが一番だ。今は眠ってろ。大丈夫、大丈夫だから」


だんだん、瞼が重くなってくる。


嗅ぎなれた香が、翠蓮の心を落ち着かせる。


「今は、眠ってろ。お前は何も、心配しなくていい」


静かに眠っていれば、全てが終わる。


……そんなことは、夢物語。


そうあって欲しくないと望むくせに、そうあって欲しいと望む自分もいる。


「祥基……」


微睡む。


最近、眠れていなかった分を取り返すかのように。


「―おやすみ」


祥基のその一言を聞いた瞬間、翠蓮の意識は遠ざかった。