「……あー、俺が悪かった。泣くな」


分かってる。


もう、引き返すことは不可能だ。


「…………俺は、黎祥ってやつとあまり一緒にはいなかったから、お前がどこに惚れたかは知んねぇ。でも、良い男なんだろ?結凛から聞いてる」


涙を流す翠蓮の頭を引き寄せて、ぽんぽんと、撫でてくれる祥基。


「好きなら、好きでいい。泣くなら、泣けばいい。ただ、一人で我慢はするな。一人で、その悲しみを乗り越えようとするな。何があっても、俺らはお前の味方だから」


優しく背中を撫でられて、翠蓮は嗚咽した。


忘れられない。


好きだって、気持ち。


「祥基……っ」


「うん。……うん、辛いな」


「知ってたのに……っ」


「うん」


「なのにっ!」


「……うん」


「どうして、好きになっちゃたんだろう……」


最近、明確に感じる。


想いは、心の底にしまったはずなのに。


仕舞いきれなかったものたちは、溢れてる。


黎祥の元に現れる人の数が多くなればなるほど、別れの刻限を明確に、翠蓮に告げてくる。


「好き、なのっ」


「うん」


「何でっ、私……」


「おいおい。自分を責めんなよ。お前はなんも、悪くねぇ」


優しく背中を撫でられる。


昔、みたいに。