「着方を教えなくてもわかっていたし……皇太后陛下の言う通りだ」


「?、義母上が……なんだって?」


「この服くれたのも、教えてくれたのも、全部、皇太后陛下だぞ?」


「…………何やっているんだ、あの人は……」


黎祥と翠蓮を引き離してしまったことに罪悪感を抱いているとは思っていたけれど、まさか、こんなことまでするとは。


「それで?何故、お前は義母上と知り合いなんだ」


訝しげの視線を投げると、


「今では、仲の良い茶飲み友達だぞ」


と、斜め上の回答が返ってきて。


「そんなことを聞いているんじゃない。皇太后といえど、彼女は後宮内の住人だし、お前は今日、初めて後宮に入ったんだろう?」


「あ、そういう……」


妙な納得をするこいつの国には後宮がないせいか、そういうことにはとことんに疎い。


頬をかいて、遠い目で小さく、


「いや、お前んとこの皇子様がな?」


と、呟く。


「皇子?皇子って、どの皇子だ?第二か?秋遠のことか?それとも、九、十のどちらかか?そもそも、先々帝の皇子?それとも、先帝?」


「いや、落ち着け」


止められて、睨むと。


「先々帝の第十皇子のことだよ。何より、第九は寝込んでるんだろ?って、違う。俺はお前に聞いたいことが―……」


「何だ?」


蒼月は自身の顎を手で触れながら、


「さっきの奴ら、まさか、龍神?」


と、尋ねてきた。