「母?何かあったのか?嵐雪」


「あ、いえ……その……」


失言した、という顔をした嵐雪は一息置くと、


「言っておきましょうか」


と、呟いて。


「その、陛下の跡継ぎの件ですが」


「ん?」


そういえば、丸投げしていた。


最近、色んなことがありすぎて忘れていた。


「翠蓮様に話を通して、翠蓮様が産んだという建前の元、とある伝手の皇子を、皇太子と致す運びにしようと思います。既に翠蓮様の許可は降りてますが、構わないでしょうか」


「……」


翠蓮の、子供として……。


(それが、現実となればよかったのに)


別れを告げられてから、数日。


それでも、下町で別れた時ほど心は荒れていないし、穏やかな気持ちでいられるのは、彼女がまだ、自分の檻の中にいるという安心感からか。


それならば、本当に最低だ。


彼女を他の誰かに奪われる心配はないにしても、こんなのは……。


「李妃が良いと言っているのなら、私は構わん。―可愛い子だといいな」


その子供の母は、一体、誰だろう。


「可愛い子、でしょうか……まぁ、御両親とも器量は悪くないので、問題は無いかと」


「?、また、よくわからないことを話すな?見てきたのだろう?」


そして、産み親に許可を取ってきたのではないのか?


そんな黎祥の疑問に、嵐雪は微笑すると。