嵐雪から聞いた、翠蓮は黎祥を許したらしい。
皇帝であり続ける黎祥を、
皇帝を止められない黎祥を、
それでいて、翠蓮を愛すことも止められない黎祥を、
自分の父親を見殺しにした黎祥を、
翠蓮は許してくれたという。
そして、これからも黎祥のために後宮の自室にこもり、事件のことについて調べてくれるそうだ。
李妃として、閉じこもる。
裏返せば、順薬師としては働くのだろう。
妃としてならまだしも、薬師として動いてもなんの利益もないのに。
翠蓮の相変わらずの真っ直ぐさは、黎祥を救う。
何度も、何度も―……。
(だからこそ、この国を肩を並べて眺める相手は、翠蓮であって欲しかった)
翠蓮は自分でこそは気づいていないが、生まれの良さを感じさせる雰囲気をしている。
凛とした雰囲気、整った顔、綺麗に着飾った、妃としての姿は本物にしか見えなかった。
「……陛下」
いつの間にか、執務室に入ってきていた嵐雪。
顔を上げると、嵐雪の視線は黎祥の手元の資料に注がれていた。
「見るか?」
「いえ、一度は目を通しましたので……」
「……本当、女は強いよなぁ」
内容を知っているのなら、と、話し始めると、
「ええ、そうですね。そして、母も強いです」
と、嵐雪は苦笑した。