「構わないよ。犯人は教えてあげられないけれど、その他のことを話すだけだからさ」


きっと、話せないことは話さないし、笑って誤魔化す。


「……ところでさ、ひとつ聞きたいんだけど、君は栄静苑の奥方である、朱幻華の妹?」


「っ!殿下も、姉さまを知っておられるのですか……?」


流雲殿下の問いに、目を見開いた杏果。


「うん。朱家の末の娘だったよね?確か、君も……僕は一度見た顔は忘れないから、信用していいよ。静苑殿の奥方は、間違いなく、朱家の幻華殿だった」


……会わせてもらう約束は取りつけたけど、確認はできてない。


同じ名前でも、別人だったら意味が無い。


反芻するように考えて、頷いた流雲殿下。


「その、流雲殿下……」


躊躇いがちに、杏果が彼に近づく。


「ん?」


「姉は……幻華は、あなたから見て、幸せそうでしたか?」


そして、答えるか否かと思われた、震える声で問いた杏果の問い。


杏果を見て、微笑んだ流雲殿下は。


(……彼は、この内容について、話すのだろうか)