「裏口、何かまた、薬草生えてるかな……」


薬草は日向か日陰か、風の強さや、その他様々な条件で、同じ薬草でも効能が変わる。


後宮から帰ってきて気づいたけれど、後宮内で拝借した薬草と家の裏に生えている薬草は少し違い、効能でいくなら、山に生えているものの方が近い。


朝早くに山に向かうと、昼頃くらいには帰って来れるけど……。


裏口から出ると、後宮からここまで帰ってくる時に使用した馬がいなくて。


二匹いたのに、二匹ともいないってことは兄様達が乗って行ったんだろう。


それなら、きっと、山からも早く帰ってくる。


(前に、祐鳳兄様が馬に乗れること、意外って言ったけど……慧秀兄様が馬に乗れる事の方が、かなり意外だったな)


手に持てる大きさの籠にとりあえず見つけた薬草は片っ端から、詰んでは突っ込んでいく。


翠蓮の家は、一周するには半刻ほどの時間が掛かる。


家族全員で住んでいた頃や、今は丁度いい広さだけど、一人の頃はかなり広くて……。


(そう言えば、今日、お母様たちに朝の挨拶をするのを忘れてたな)


ふと思い出した、重要な日課。


朝からバタバタして忘れていた!


籠はそのまま置き去りにして、お母様と弟妹、形だけだけど、お父様の眠る墓に向かう。


(お父様の訃報を聞いた時も、泣きながら、あのお墓に手を合わせたんだよな……)


裏にあるお墓と呼ばれるものは、お父様が作ったものだった。


お墓というものが何かよく分からないけど、お父様のお母様……つまり、お祖母様の故郷では亡くなった故人の骨を入れるためのものと、お祖母様が言っていた、と、お父様には聞いたことがある。


要するに、故人を偲ぶものだろうと家族で勝手に判断して、お祖母様の冥福を祈ったものだが……。