「……母上は厳しかったからな。勉強のことについては特に言わなかったが、人としての礼儀は、父上と一緒に叩き込んできた。懐かしいな」


「俺も鍛錬とかいう理由で、よく真剣で追いかけ回されたな。父上ってば、つえーの。今思い出しても、子供相手にあの目はおかしい」


「フフッ、何事も全力な人達だったからねぇ〜」


お陰様で、翠蓮たちは知らないうちに色々と叩き込まれていたってわけだ。


「―ご馳走様っ!」「ご馳走様でした」


「お粗末さまでした」


食事の挨拶もきちんとして、食器の片付けに移る。


帯剣した祐鳳兄様は外套を羽織ると、


「じゃあ、俺、麟麗や鈴華と代わってくるな」


と、言いながら、家を出ていく。


現在、代わり代わりで食事をする方法をとっており、翠蓮は専ら、炊事担当だ。


「じゃあ、僕は薬草を詰んでくるよ。いつものでいい?翠蓮」


「本当?予備がなくなってきていたから、助かるわ。……そうね、腹痛の薬草を少し多めに欲しい。後宮内の至る所に生えていたから、拝借してきたんだけど……これが足りなくて」


「分かった。じゃあ、行ってきます」


「行ってらっしゃい」


慧秀兄様を見送って、そして、食器を片付ける。