「……怪我人を出すわけにはいかぬの」


「それどころか、死者が出る可能性もありますよ。あくまで、卜占での話ですから……当たらない確率の方が高いのですが」


「……」


女官の変な噂、


叔父上の卜占、


そして、初代の遺体の行方―……。


国を立て直すだけでなく、色々と……本当、めちゃくちゃにしてくれたものだ。先帝は。


「初代の遺体が不明であることもあり、嫌な予感がするのです。上手く言えませんが……何か、関連性がありそうで」


「確かに」


「……」


とは言っても、起こってもいないことについて考えるのは、難しい。


「ともかく、この件は心に留めておいて欲しいと願います。―そして、陛下。貴方がわざわざ、私を呼んだということは、別に聞きたいこともあるのでしょう?」


話題を切り、聞いてくる叔父上。


黎祥は小さく頷き、皇太后に向き合う。


「そう言えば、何か言いたげでしたね。どうしたのです?人前で聞けないことだという雰囲気なので、よっぽどの事かと思ったのですが―……」


「義母上」


「……」


「聞きたいのですが、先帝は貴女の子供ではないのですよね?」


嵐雪は直接、皇太后から聞いたらしいが……どうせなら、自分の耳で確認したい。


皇太后は黎祥の突然の質問に呆気に取られたあと、


「ええ。妾が産んだ子供ではなく、湖烏姫が産んだ子供ですよ。先帝……勇成は」


「どうして『宵始伝』にも、その他のものにも、あなたが産んだ子供ということに―……そのような内容を修正しなければ、愚王を生み出した母として、貴女は非難されるのですよ?後世に、そのような愚かな名を遺すおつもりで?」


お世辞ではなく、皇太后は素晴らしい女傑だ。


彼女ほど、皇太后という名が相応しいものはいないと思わせるほどに。