「―っ、いいえ!もう少し、頑張る!」


自分の頬を自らの手で張った彼女は、顔を上げて。


書物に目を通し始める。


「そうですか?無理しなくても……」


頑張れば、いつか実を結ぶ。


「無理じゃないよ!自分で決めたことを、精一杯やれることがとても嬉しい」


「そうですか?」


「うん。昔は、お母様に禁じられてたから……」


昔を懐かしむような、少し遠い目をした麟麗様。


「学を無闇に嗜んでいては、夫になる人を立てられないって言われてたの。馬鹿よね。立てる価値もない人が、お母様の夫だったのに……」


きっと、先帝と円皇后のことを思い出しているのだろう。


子供は親がどんな害悪でも、一生、切り離せない。


良い思い出だろうが、辛い思い出だろうが、両親というのは、この世に生み出してくれた人たちっていうのは、二人しかいないんだから。


目元を擦ろうとする麟麗様の頭にそっと手を置くと、


「ごめんなさい……」


謝罪しながらも、素直に涙を流す麟麗様。


泣いていいんだよ。


泣くことは、何も悪くない。


親を思って泣くのは、何も悪くないんだよ。