「……というわけで、左大臣と左大臣補佐は、今はいません。空座です」


「覚えておきます。……にしても、右大臣もいらっしゃらないんでしょう?」


「ええ、いません。ある日、行方を眩ませました。でも、順大学士は詳細を知っているみたいですし、高家出身の宰相様が優秀なので、特に問題は無いみたいですよ」


宰相様……高淑太妃―紫薇様の兄君か。


当たり前だけど、かなり優秀なんだろうな。


まぁ、じゃないと、国を動かせないか。


「では、次の問題に―……」


―その後も、色々な質問をされた。


答えられるもの、答えられないものと様々だったけど、いつだって、怜世様は優しく温厚で。


おまけに、官吏になれば、大出世できそうな程の知識の持ち主。


何を聞いても、丁寧に返してくれる聖人のような彼。


それなのに、彼が何の地位にもおらず、家の中にいる理由……その真相を翠蓮が知るのは、もう少し先の話。