「頼みの綱に、とある家があるよ。李家だと、色々と問題が出てくるだろうし……うちも、商人だからな。敵は多い。問題に巻き込まれないよう、その家の養女になればいい」
「良いのでしょうか……」
「行くあてのない者を救っている家だから、問題ない」
乱れた髪を手で整えてやると、
「すぐにお役に立てるよう、頑張りますね!」
と、笑いかけてくる。
どこまでも、皇女様らしくなく。
「―あっ、あれ、李家の人では?」
呆然としていた祥基は麟麗にそう言われ、視線をあげる。
「……翠蓮ー!李家の迎えが来たぞ!!」
少し離れたところの井戸で、服をまくってた翠蓮。
祥基の声に返事をすると、髪を整え始めて。
それを見て、
「……私、翠蓮みたいになりたいです」
と、何故か、麟麗は呟いた。
「翠蓮みたいに、常に笑っていたい」
けれど、その次に言われた言葉に納得。
どんなに辛くても、笑う。
それが、翠蓮のくせ。
誰かに甘えられない、そんな翠蓮みたいになりたいというのは、些か、やめておいた方が良い気もするけれど。
あの、どこまでも突き進もうとする姿勢は、真っ直ぐさは、呆れるほどに祥基も憧れている強さだった。
でも、そんな翠蓮でも泣く。
泣き崩れる。
この間の翠蓮の泣き顔を思い出して、祥基は
「―ま、頑張んな」
と、麟麗の頭を撫でた。